山に入って3日目・・・もはやテント内は異臭で目がシパシパです・・・
とうとう今回の冒険のメインディッシュと思われし大キレット挑戦の朝がやってきました・・・
というより来ちゃいましたといった方が表現的には正解か・・・
朝、テントから顔を出すと若干雲があるものの晴れ間も出ていて、風も無し・・・
隊員の顔も元気一杯・・・
逃げる要素が一つも無い状況に、目が冴え気持ちが高ぶる・・・
ワントーン声を荒げ・・・
“行きますか?”の問いに行きましょうとの返事・・・
実動4時間30分 恐怖との戦いが始まる・・・
私は何時間掛かっても良いので無事に通過してください・・・とそう願いながら全員のザックの腰ベルトと胸のベルトを一人ずつチェックしながら、締めあげました・・・
お前はまだ早いだろう?と問われる様な看板に気合が削がれる思いもありましたが、未熟者である事の強みは繊細なまでの危険に対する慎重さを十分に理解する事だと言い聞かせ、南岳をキレットに向かって下降する・・・
もう戻る事は無いだろう・・・
次第にコルの連続に一同は驚愕・・・
あれを越えるのか?
前を歩く隊員は後から歩く隊員に右足の位置や左足の位置を指示する・・・
浮石のチェック・・・
震える声でチェックしあいながら、長谷川ピークを通過・・・
一歩間違えれば断崖絶壁の底までノンストップで落ちて行くだろう・・・
死ねない・・・
死なないで・・・
3点確保を十分に意識すると、両足、両手の感覚が研ぎ澄まされる・・・
鞍部から見上げるは、飛騨泣きと恐れられる絶壁の登り・・・
ヒョエ~!!
もはや見上げる壁に登山道としてのルートが理解出来ない・・・
ここの入り口は落石が多いという情報があったので、先行者が我々にとって十分に安全な位置まで行ってから、スタート・・・
胸突き八丁を通り越して9丁・・・
怖い・・・
下を見ると怖い・・・
鎖は手を添えるだけと思ったが、その鎖に体重の三割程を預ける場面が幾つかあったが、その度に恐怖の塊りが襲ってくる・・・
直で登る事よりも下る事よりも、横ばいが怖い・・・
それでも一歩一歩・・・
飛騨泣きをクリア・・・
上を見ると北穂高の山荘が見えた・・・もう少し・・・
よじ登る・・・
まだか!まだかと!!よじ登る・・・
その先の歓喜まで気は抜けない・・・
北穂高山荘&山頂到着・・・
俺達・・・生きてる・・・
少々大げさかもしれないが、生きてるという事を猛烈に実感しました・・・
そして隊員達は抱き合った・・・
ひと休憩入れて・・・
北穂高山頂から涸沢岳を通過してもう一つの百名山である奥穂高へ!!
正直、危険な所はもうウンザリだった・・・
しかし、まだまだ続くとは・・・・こんなにもとは思ってもみなかった・・・
北穂高から高度を落として・・・
またコルの連続・・・D沢のコル・・・
いやいや怖いっす・・・
心の疲労も体の疲労もあったと思うが・・・集中力がそれらを十二分に凌駕する・・・
そして涸沢岳山頂・・・
雨が降って来た・・・
危険な所を全て通過し終わって・・・雨が降って来た・・・
幸運だった・・・キレットのあの岩が濡れてたら?あの恐怖のステップが濡れてたら?
怖すぎる・・・
奥穂高山荘・・・
一息入れて奥穂高へ登り50分・・・
日本第3位・・・3190メーター奥穂高ピーク
下り40分・・・もう体力というより気力がなえた感じ・・・
奥穂高山荘にテントを張り・・・
疲れきった体を横にして隊員からの一言が胸に突き刺さる・・・
“隊長(私の事)、緊張したでしょ・・・企画者としてのプレッシャーは並じゃ無かったでしょうね・・・もしも私達に何かあったらって考えてたんでしょ・・・でも私達生きてますよ・・・本当に貴重な体験をさせて貰いました・・・ありがとう・・・
いや~途轍もない責任から解放されました・・・
涙が止まりませんでした・・・
翌朝・・・
報われるご来光・・・
ザイデングラードを下り
涸沢小屋からの大パノラマ・・・・
美しい・・・
で・・・
いつもの通り・・・
地獄の下り開始・・・・
横尾の吊り橋まで下り・・・
あとは高低差の無い道を11キロ・・・
上高地に着いたらしたい事・・・
①温泉に浸かり、ゴシゴシ体を洗って洗いまくる(5日間ぶり)
②揚げ物系のご飯を食べる(山メシしか食べてない、肉が食べたい)
もう疲れた体を振りしぼるにはこの2つの目標しか見えなかった・・・
そして感動のゴールへ!!
スタートで円陣を組んだ場所で円陣・・・よくやった・・・
上高地は観光客に溢れていて、その中を颯爽と歩く私達は何だか誇らしかった・・・
温泉・・・
食事・・・
全て叶えた・・・・至福・・・
掛け替えの無い仲間との達成感・・・
一生忘れません・・・
有り難う・・・貴方達は勇者です・・・
この冒険の是非はあくまで自己責任の中で成しえたもので、無茶か?と言えば無茶かもしれないが・・・
山が私達に教えてくれたものは、言葉では言い表せない程のものでした・・・
さぁ~現実の世界に戻って仕事しましょう~!!
出来るでしょ!!
いままで中々行けなかったお客の所にも・・・
あの命を削ったあの岩を越えたんだから・・・・
来年はどうしましょ!!